東京高等裁判所 昭和53年(ラ)415号 決定 1978年7月05日
主文
本件抗告を棄却する。
抗告費用は抗告人の負担とする。
理由
本件抗告の趣旨は、「原決定を取消す。抗告人の本件異議申立てを認容する。本件に関する申立費用はすべて相手方の負担とする。」との決定を求めるというにあり、その理由は別紙記載のとおりである。
しかしながら、競落不動産の引渡命令を求める申立てを却下する決定に対しては、原判示のとおり民事訴訟法五五八条の即時抗告の方法により不服を申し立てるべきであつて、同法五四四条の異議を申し立てることはできないものと解するのが相当である。競落不動産の引渡命令に対する不服申立てについては、右命令を発するにあたり口頭弁論又は審尋を経ることなく相手方に陳述の機会を全く与えていない場合には、相手方は民事訴訟法五四四条の異議を申し立てることができるものと解するとしても、前記却下決定の場合は、これにより不利益をうくべき申立人は申立て自体により自らの主張を陳述しているのであつて、これに対する審尋がなされているものと解して差し支えないから、申立人に右異議による不服申立てを認める理由はないというべきである。所論は採用することができない。
他に原決定を取消すべき違法な点は認められない。
よつて、本件抗告を棄却し、抗告費用を抗告人に負担させることとして主文のとおり決定する。
(小林信次 滝田薫 河本誠之)
【申立理由】 一、原審執行裁判所は申立人がなした引渡命令に対し却下の決定をなし、これに対し異議の申立をなしたところ本件は民訴五八八条に基く即時抗告の申立によらなければならないと断定し申立人の異議申立を即時抗告申立の趣旨であるとしても申立期間の不偏期間を徒過しておるとの理由でこれを却下した。
二、本件の如き引渡命令却下に対する不服申立については債務名儀説、異議説、折衷説等学説の存するところであるが、最高裁判所判例は折衷説を採用し先づ第一に利益の存する間は異議申立の方法により異議申立却下決定に対しては即時抗告の方法によるべきであると判示され、実務上はいずれの裁判所に於てもこの折衷説に従い取扱っておる。
三、然るに原審裁判所は審問をなさず、申立人の引渡命令却下の決定をなし、此の決定に対し異議申立をなしたところ異議理由審査のための口頭弁論を開かないのみならず申立人には異議申立権がなく、即時抗告申立によるべきであるとして取扱い、即時抗告申立期間を徒過しておるのでこれを却下すと理由づけをしておるが異議理由を聴取しないでなされたこの裁判に対しては納得できないので抗告の申立をいたします。